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なみいる九十九名の織官を喧嘩と実力で下し、位、人臣を極めた金杼を所持しているのが、チーミンの自慢だ。
滅多なことでは動じないその強心臓が、不正なほど脈打った。
チーミンの唇に、男の薄い唇が、重なっていた。
はじめは挑むように軽く。それから煽るように唇の輪郭をなぞり。チーミンの心身を火照らせ、思考を溶かしてくる。
しかもチーミンの唇を奪った男は、後れ毛がむやみに色っぽい、宮廷人にも珍しいほどの美丈夫で。
「吾は理解した。それも完璧にだ――」
突然現れた美男は、チーミンからそっと唇を離して言った。
「チーミンに足りてないのは真実の愛……!」
「話を聞かねえその性格、どうにかならねえのかテメエ」
「たいていの人は、吾の顔の造作にまず注目するんだけど、チーミンは外見より中身を重視してくれるんだ、嬉しいなあ」
「あ! そういえばユゥジン、テメエその姿どうしたよ人間になってんじゃねえか!」
喧嘩の強い宮中女子どもを悉く下し、傘下に加えてきたこの私が、鳥の接吻ごときで膝をガクつかせているなんて、絶対に知られてはいけない。いいかチーミン、それが初めてだったくらいで、相手がなんかよくわからない鳥だったくらいで、動じるんじゃねえ――
と、チーミンが自分を諌めているうちに、ユゥジンの話はどんどん進行していて、チーミンは、実はわりと話に着いていけてない。
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