1章 ようこそ天上界

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なみいる九十九名の織官(どうりょう)を喧嘩と実力で下し、位、人臣を極めた金杼を所持しているのが、チーミンの自慢だ。 滅多なことでは動じないその強心臓が、不正なほど脈打った。 チーミンの唇に、男の薄い唇が、重なっていた。 はじめは挑むように軽く。それから煽るように唇の輪郭をなぞり。チーミンの心身を火照らせ、思考を溶かしてくる。 しかもチーミンの唇を奪った男は、後れ毛がむやみに色っぽい、宮廷人にも珍しいほどの美丈夫で。 「吾は理解した。それも完璧にだ――」 突然現れた美男は、チーミンからそっと唇を離して言った。 「チーミンに足りてないのは真実の愛……!」 「話を聞かねえその性格、どうにかならねえのかテメエ」 「たいていの人は、吾の顔の造作にまず注目するんだけど、チーミンは外見より中身を重視してくれるんだ、嬉しいなあ」 「あ! そういえばユゥジン、テメエその姿どうしたよ人間になってんじゃねえか!」 喧嘩の強い宮中女子どもを(ことごと)く下し、傘下に加えてきたこの私が、鳥の接吻ごときで膝をガクつかせているなんて、絶対に知られてはいけない。いいかチーミン、それが初めてだったくらいで、相手がなんかよくわからない鳥だったくらいで、動じるんじゃねえ―― と、チーミンが自分を諌めているうちに、ユゥジンの話はどんどん進行していて、チーミンは、実はわりと話に着いていけてない。
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