1章 ようこそ天上界

33/35
前へ
/105ページ
次へ
「日月廠は世界を作る場所。工員は必要に応じて人になる時も、乾鵲になる時もある。鳥の姿だと不便なときもあるからね。たとえばチーミンに愛をささやく時とか」 鳥は……というか今や人の姿を取っているユゥジンは、人の形になっているけれども鳥みの方が強いらしく、やっぱり人の心を解さない。わけのわからないことを言い出した。 「これからチーミンを、吾の可愛い小鳥、と呼ぶことにしよう!」 「鳥に小鳥とか言われたくねえよ。浮槎の織官を口説きたかったら、おしゃれ度を上げて出直して来な」 「知ってるかい、孔雀の雄はあの虹色の羽の目玉が一定数を超えないと雌の愛を得られない。鳥は人よりおしゃれに敏感なんだ」 「テメエは白黒じゃねーか」 「無彩色はおしゃれの極致だよ、吾の可愛い小鳥」 「言い得て妙なのが、なんか悔しい……」 「おしゃれな吾と、チーミンの愛を取り戻しにかかろう! 愛の報酬が星の修繕ってわけだ。吾らの愛が世界を救う。吾の可愛い小鳥だって、星の破壊者になるより、愛でも語らってた方が寝覚めがいいはずさ。しかも、吾は接吻だけは上手いと定評があるんだ! そんなお得な男子を、独占する権利をチーミンにあげよう!」 鳥と恋愛するとか上級者向け過ぎる。 虚無に抱かれ、チーミンはけだるくそっぽをむいた。 「愛なんていらねえよ。言っておくけどな、テメエの接吻なんざ百戦錬磨の私にかかれば、虫刺されみてェなもんだ」
/105ページ

最初のコメントを投稿しよう!

22人が本棚に入れています
本棚に追加