1章 ようこそ天上界

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そっけないふうのチーミンの様子に、宮中女子のアタマを張るチーミンをガクつかせた接吻が巧すぎる鳥は悲鳴を上げた。 「なんだって! 吾の接吻で心が融けない子がいるなんて! 今回の織客は滅亡論者、いや大量破壊主義者か! いるんだよ時々!」 「愛なんていらねえ。愛なんていらない……ただ重七祭を!」 「重七? ああ、吾の可愛い小鳥の世界のお祭りか」 虚無主義者になり果てたチーミンとても、浮槎という世界に未練がないわけではない。宮廷勤めで娯楽と言えば、宮中内行事の観覧ぐらいだ。チーミンは六日前から織女神の祭壇を作るくらい、それはそれは楽しみにしていたのだ。 それら全てが、一年前に作られた世界の風習だったとしても。 姉妹のように暮らしている同僚たちと、五色の瑞雲に願いをかけて。買い込んだ揚げ菓子を頬張る。あのじんわりとした、年に一度の楽しさまでが、虚無ではないと信じたい。 重七祭を守る。ついでに世界も守る。それができるのは、チーミンだけのはずだ。 「わかったチーミン。約束しよう。期限内に修繕作業を終わらせたら、吾は責任を持って浮槎に送り届ける。吾の可愛い小鳥は、存分に重七祭を楽しむんだ」 「わかりました、織りましょう。世界を」 ただし、とチーミンは釘を差した。 「決して、くれぐれも、絶対に、私が機を織っているところを見ないでくださいね」
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