2章 星の修復

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2章 星の修復

翌朝。 といっても月廠は常に夜なので、香時計が朝だと教えてくれたのだがそれはさておき。月廠の裏手の井戸端に、チーミンは立っていた。 バサバサと無駄に回転飛行して、ユゥジンはチーミンを無駄に励ましにかかる。 「浮槎世界の期限はあと五日。これより、浮槎を守るために、吾の可愛い小鳥は、浮槎の綻びを覆う織物を仕上げる。ここまではいい?」 「くどいな。それより今から取りかかって、間に合うのかよ」 織物はとかく時を食う。チーミンが浮槎の宮中で制作していた織物は、織り糸が細く、一日で一寸(約三センチ)仕上がれば、腕がいいとされた。 「五日やそこらで織れるかって? 織れる。だからチーミンを呼んだ。浮槎での常識はいったん忘れて」  どうやらそのあたりは地上と勝手が違うようだ。 「ならいい。仕事にかかんぞ」 その返事に満足したのか、ユゥジンは一つうなずいて、今日の予定を告げた。 「それじゃ今から材料を調達し、製糸をおこなう」 「製糸? そこからかよ!」 狂ってやがんな。と、チーミンは内心で悪態をついた。 糸つむぎを、織物の過程に入れていいのだろうか。ふわもさした繊維を細く丈夫に寄り合わせてやっと、機織りのための糸が仕上がる。それが製糸だ。宮中では、すでに糸の形になったものが納入されてきたから、それを織機にかけるところからがチーミンたちの仕事だった。 これは……製糸の専門家が行ったほうがよい仕事ではないだろうか。 「心配無用、心配無用。原料調達は難しい仕事じゃない。皆もそう言ってる」 「皆って誰だよ?」
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