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動揺を悪態でひた隠すチーミンと、新しい織客に興味津々で好奇の目を向ける鳥美青年たちの膠着は、剪によって破られた。
チーミンは、ユゥジンに握らされた剪で我に返った。
「さあ、皆の袖という袖を切り取るんだ! それが修復材の原材料!」
「皆ってあの男子たちの?」
「残らずだ!」
躊躇している暇はない。
チーミンの世界は、あと五日でほどけて無に帰してしまうらしい。乾鵲が化けた見目麗しさなど、所詮虚構にすぎない。すぎないはずなのだが。
「やほ、彼女。新しい生活には慣れた?」
「こないだみたいにまた踏んでよお」
「袖を切るとは、なんたる破廉恥。好きだ」
「ああっ、そんなとこ切っちゃうの、切っちゃうのお、きわどいなぁ!」
「好きなくちばしの形は? おれの結構色っぽいって言われるんだけどどう?」
奇妙なことに、彼らの袍の袖は、剪を入れると、そこから美しい漆黒の羽毛となった。美人の森を進むにつれ、チーミンが提げた竹籃は、羽毛で幾杯も満たされていった。
あらかた刈り取り作業が済むと、ひょいとユゥジンがのぞき込んできた。
「――ええっ、チーミン、何で今にも死にそうなほど失血しているの?」
多量の出血で座り込んでしまったチーミンを見下ろして、とびきりの美青年ことユゥジンは小首を傾げた。
「天上界の愛とやらは、刺激が強すぎるんですよ」
美を追究するのが生業の織官であったチーミンは、美に対する感受性が極めて強い。極上の美形男子群が、早く鳥の姿に戻ってくれないと、鼻から失血死する。と、チーミンは頭をくらくらさせた。
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