2章 星の修復

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 チーミンは顔をしかめながら淡々と口元を拭いた。 「わめくな、何でもねえ」 「なんでもない? また血を吐いたよ⁉ しかも昨日よりすごい量!」 「浮槎の民は衣服がおしゃれでないと死んでしまうんです。それなのに今日私、きのうと同じ服着てるんです。すごくダサいやつ。血ぐらい吐きます。なぜ天上界には仕立て屋がないんです?」 「チーミン、金のかかる女……!」 「テメエらがそういう設定で織った(つくった)んだろうが!」 「吾の可愛い小鳥、創作は感性だよ」 この鳥、絶対、説明書とか読まずに作るほうのヤツだ。 「とにかく、浮槎の民に愛をささやくなら、服飾費が生活費の九割になる覚悟はしてください。私への愛とは高価でおしゃれな衣服なのです。げはっ」 「まずい、あたり一面、血の海だ!」 「チーミン死すとも納期は死守す!!」 「怖い、一流職業人怖い!」  血反吐を吐きながら糸を縒り続ける女は、へたな説教より、緊張感のない鳥どもを震撼せしめた。その証拠に、それから毎朝、新しい衣装(廠長の衣装棚からくすねた)が窓辺に届けられるようになるがそれは別の話。
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