3章 糖の奴隷と思わぬ妨害

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3章 糖の奴隷と思わぬ妨害

月廠と日廠のあいだに横たう河漢(あまのがわ)は、浮槎の地上から見上げるとおりの乳白色。 雲の波頭の中、無数の星々があえかに浮かび上がるさまは、天燈祭を上から眺めるように詩的だ。 「黒糸をね、この河漢の水につけると、白くなるんだよ。それが白糸の正体」 日廠の井戸水しかり、この天界の水だか雲だかには、不思議な力があるようだ。 「では、さっそく……」 と、チーミンが、河漢の雲を汲みかけた時だ。 ユゥジンが首を振った。 「この辺のじゃダメ。時々、織客とか流れてくる。不純物が混ざっててきれいに染まらない」 「仮にも愛をささやいている対象を、不純物呼ばわりかテメエはよ」 「違う違う。チーミンの浸かった残り水を啜ってもいいのは、この世界で吾だけだよ」 「それで使ったあとの浴槽の水が、翌朝いつも無くなってるのかよ!」 「それでは、いざチーミンと、河漢源流の旅! ――クシュン!」 「ちょ、ちゃんと説明しろよ!」 ちなみに浴槽には自動排水機能がついていたようです。
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