3章 糖の奴隷と思わぬ妨害

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川縁をユゥジンと連れ立って進む。後ろからは、やたら噴嚔を繰り返す鳥美青年どもが同行してくる。 どのくらい歩いただろう、景色が変わらないので距離がつかめない。足が痛くなってきた頃だ。 はるか崖の下。曳くのに何百人も要しそうな巨石があらわれた。 巨石の周囲からは、雲母のように輝く雲が湧出している。石から湧いたきらめく白雲は凝集し、一条の河となって流れていく。 この巨石こそが、天河の源泉―― 「あの崖の下、雲石の近くの湧きたての雲を、この桂の枝に絡め取るんだ」 「チッ、面倒だな。さっさと済ませるぞ」 チーミンは、血を吐くほどやぼったい月廠の作業着の袖をたくし上げ―― と。そこで、チーミンの手が暖かいものに包み込まれた。 それまでチーミンの握ってきたものといえば、糸か布か杼くらいのものだった。そのどれとも違い、暖かく、筋張って、思いのほか力強かった。ユゥジンの手の感触は。 急に何なんだよこの鳥は。 チーミンは言葉にならない感情が心の中で乱れるのを感じながら、振り払った。 「気安く触るんじゃねえよ」 「ここからは足場が悪い。吾が案内するから」 たしかに、その足場は砂利から、水場特有のぬめりがある岩場へと変じていた。しかたなくユゥジンの先導で手を取り合って下りていく。 「初めての二人の共同作業だねチーミン」 調子に乗ったユゥジンは、水場のぬめりにかこつけて、チーミンの腰に手を回して来る。 またなし崩しに溺愛へ持ち込む気か。そうはいかない。いくら接吻が上手かろうと、浮槎で百官の頂点に立つこのチーミン様を籠絡し、いいように振り回す存在など認めない―― 身を硬くしたはずみに、ぬめる岩場で足がもつれ、チーミンの体が傾ぎ――
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