3章 糖の奴隷と思わぬ妨害

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眼を開けると、ユゥジンの腕の中に収まっていた。ヒューと。ユゥジンの手並みに、仲間たちが唇でほめそやす。いや、さえずりだろうか。 「チーミンの体はいま、チーミンだけのものじゃないんだ。世界ひとつを背負っているんだ。加えて今は吾のつがいでもある。怪我をされると悲しい」 「つがった憶えはねえよ」 喜怒哀楽、そのどれともつかない、吸い込まれそうな――ユゥジンの夜色の睛。映すのは、チーミンただ一人。 「そんなにガン飛ばしてきたって、その事象は私の中で虚なんだよ!」 チーミンはもちろん、乾鵲たちの期待通りに、鼻から紅い水を噴いた。 うんうん、とユゥジンは、得意げにうなずいた。 「なるほど、なるほど。吾の可愛い小鳥はこういう顔に弱いのだな。つまりこういう顔をおしゃれだと思ってるわけだ。構わない。穴の開くほど吾を観賞し、今こそおしゃれ分を存分に補ってくれ」 「憶えてろよ……」 チーミンは鼻血を啜り上げながら、敗北感とともに唇を尖らせた。
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