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舟の漕ぎ手の、チーミンに対する態度もうやうやしい。
「大人(偉い人への敬称)、簾をおろしましょうか」
「かまいませんよー、民が身なりを意識するのは、われらが始祖・織女神の意にかなうこと」
「なれど、その織女神に寵された御手を持つ織官ともあろう方を、あのようにぶしつけな目で見やるとは……!」
「よいのですー。織り方にせよ、縫い方にせよ、技術とは盗んで覚えるものです」
チーミンは軽い調子で手を振った。
織官の衣装の細美さは、織主に次ぐ。その技術は浮槎の誇り。民に心行くまで織り目を鑑賞させるのも、織官の役務だ。宮中出仕となった十年前から、王や先達から、そう叩き込まれている。
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