たそがれ姫とまひるの王

1/20
22人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
「結局さぁ、ようは自分が何を信じてるのかって話じゃね?」  (めずら)しい異国の軍服を着て騒々(そうぞう)しく部屋に押し入ってくるなり、そう言って真朱(まそお)は笑う。よくもまあそんな(のん)()に、と(もえ)()は内心(あき)れた。窓の外には(いく)(すじ)もの黒煙が上がり、この王城にだって追っ手が迫っているはずなのに。 「なんの話かわからないけど。とりあえず真朱(まそお)、お帰りなさい。というか、お戻りをお待ち申し上げておりました我が君」 「おう」  真朱(まそお)はプレセペ星団南八十八向にあるレビ星の王息、つまり今となっては(ゆい)(いつ)()()の王位継承者だ。というのもレビ星の王族は九年間続いたゲゼル星との戦争で、刺客に全員殺されてしまったから。 「おまえ本当にあの(もえ)()か。あのお(てん)()()(ざる)が、まさかこんなに妃らしくなってるとはな」 「失礼な。私だってもう十八だよ。真朱(まそお)がレビを出て六年もたったんだから」  (もえ)()は唇を(とが)らせる。せつな、しゃらりと髪に()した金歩揺(きんほよう)が鳴った。複雑な花桃紋様の髪飾り。代々の正妃に伝わるこの(いつ)(ぴん)は、婚儀の前日に王母から譲り受けたものだ。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!