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「結局さぁ、ようは自分が何を信じてるのかって話じゃね?」
珍しい異国の軍服を着て騒々しく部屋に押し入ってくるなり、そう言って真朱は笑う。よくもまあそんな呑気に、と萌黄は内心呆れた。窓の外には幾筋もの黒煙が上がり、この王城にだって追っ手が迫っているはずなのに。
「なんの話かわからないけど。とりあえず真朱、お帰りなさい。というか、お戻りをお待ち申し上げておりました我が君」
「おう」
真朱はプレセペ星団南八十八向にあるレビ星の王息、つまり今となっては唯一無二の王位継承者だ。というのもレビ星の王族は九年間続いたゲゼル星との戦争で、刺客に全員殺されてしまったから。
「おまえ本当にあの萌黄か。あのお転婆子猿が、まさかこんなに妃らしくなってるとはな」
「失礼な。私だってもう十八だよ。真朱がレビを出て六年もたったんだから」
萌黄は唇を尖らせる。せつな、しゃらりと髪に挿した金歩揺が鳴った。複雑な花桃紋様の髪飾り。代々の正妃に伝わるこの逸品は、婚儀の前日に王母から譲り受けたものだ。
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