どうしても 会いたかった

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 お葬式には白井さんも来てくれたけど、話はできなかった。1週間後、私は白井さんにメッセージを送った。  “お久しぶりです。この間は助けてくれてありがとうございました。少しお話がしたいんですけど、会うことってできますか?”  白井さんからは1時間ほどしてから返信が来た。  “僕も話したいことがあるので、ぜひ会いましょう。今週なら18時以降は大体空いているので、岩代さんの都合のいい日にち教えてください”  私は2日後を指定した。  白井さんに会いにいつもの駅に降り立った。おばあちゃんの家は他の人の手に渡ることになったので、一昨日業者の人と一緒に遺品整理を済ませて、もうおばあちゃんの家は空っぽだった。だから、私がこの駅で降りるのはこれが最後になるだろう。  駅を出たところで白井さんが待っていた。 「お待たせしてすみません。お久しぶりです」 「いえ、だいぶ元気になられたようでよかったです。行きましょう」  行き先は前に珠実と一緒に行った喫茶店。2人でコーヒーを頼んでから、私は口を開いた。 「この間は本当にありがとうございました。白井さんがいなければおばあちゃんの発見がもっと遅れていたと思います。それ以外でも、たくさん助けて頂いて本当にありがとうございます。これ、大したものではないですけど」  そう言って小さい箱を差し出した。白井さんは遠慮したけど、自分じゃ使わないものだからと言ったら受け取ってくれた。 「これは……メガネケースですか?」 「はい。帰りに自転車乗るとき眼鏡かけてたと思うんですけど、ケースが壊れかけていたので」 「そんなところ見られていたんですね。恥ずかしいな。でも、買い替えなきゃと思いながら面倒で放置していたんです。ありがたく使わせていただきますね」  そう言って鞄からメガネケースを取り出して、その場で入れ替えてくれた。
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