エピローグでプロローグ

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エピローグでプロローグ

「あの、ひょっとして、佐伯さん?」   電車を降りると、僕は思い切って彼女に声を掛けた。 「はい」   彼女は頬をほのかに赤くすると、伏し目がちに答えた。 「あ、僕は......」 「谷口君!だよね」   そうか、分かってたのか。 「気づいてたの?」 僕が聞くと、佐伯さんは、 「うん」   と答えて頬をますます赤くした。そして、 「何で文庫本なんか出したの?」 と言って上目遣いに僕を見つめた。 「それは……」   僕は、答えを飲み込むと、 「佐伯さんこそ、何でイヤフォンなんか出した  の?」   と聞き返した。 「ずるい」   佐伯さんは、頬を真っ赤にして僕を睨んだ。 僕は、すかさず、 「佐伯さん、僕と付き合ってください」   と彼女に告白した。 佐伯さんは、大きく目を見開いて、しばらく目を白黒させていたけど、小さな声で 「ずるい」   と、もう一度呟いた。 そして、文庫本をその手に持ったまま、 「こちらこそ、お願いします」 と言って微笑んだ。 おしまい
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