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一日目
彼女のことが目に留まったのは、彼女が文庫本を手にしていたからだ。
通勤電車の中。
多くの人は、手にしたスマホをいじっている。
そんな中、そっとページをめくる彼女の所作が、とても美しく見えた。
一言で言うなら、彼女は静謐を身に纏っていた。
すっと伸びた背筋に、凛とした横顔、文字を追う真剣な眼差し。
そんな彼女を窓から差し込む朝の光が優しく包み込む。
扉の手すりの近くで、陽光に照らされて佇む彼女は美しく輝いて見えた。
僕は、一目で彼女に恋をした。
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