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 土曜日の午後の横浜駅の構内は思ったよりずっと混雑していた。  私用でこの街に訪れるのは何年ぶりかと数えると、片手では足りなかった。  昔は暮らしていたこの街に足が遠のいているのは、祐太郎が自殺したことと無関係ではないだろう。  祐太郎とは横浜で出会った。  岐阜から出てきた祐太郎と、愛知から出てきた佑は、同じ大学の同級生だった。  学部やサークルなどは違ったが共通の知人を通じて知り合い、すぐに互いに惹かれるようになった。  保土ヶ谷にあった祐太郎の狭いアパートで初めて肌を重ねた夜のことは、細部はもう無理でも、思い出そうと思えばまだ思い出せる。  大学には違いけど、最寄りに駅はない祐太郎のアパートまで、バスに揺られて通った日々は、今までの人生の中で最も幸せだった時期のひとつだった。  なぜ別れてしまったか。  それを後悔したのは、別れて直後の数年と、祐太郎が死んだと知った後の数年だった。  絵美子と待ち合わせているのはみなとみらいにある美術館の前だった。  横浜から私鉄に乗り換えるつもりだった佑は、改札を出て、東口へと進む。  待ち合わせの場所には、多少迷ったとしても二十分もあれば着く。  時間はまだ三十分はあった。佑は久々に横浜の街を歩く気になっていた。
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