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 その後も絵美子からはときどきラインが入った。  今度は東京のどこどこに行きたい、なになにが食べたいと店の情報を送ってきたりする。  佑は、その都度、じゃあ今度と適当に返していた。  母親の風子が同じようなことを言いながら、祐太郎と自分を訪ねてきていたことをこの子は知らないのだろう。  一周したということだ。それだけ時間が経ったのだ。  一人の生活がすっかり確立して数年が経つ。  祐太郎と別れた後も、何人かの男と付き合ったが、長く続く者はいなかった。  それを寂しいとも思わなかった。  仕事と自分の生活と健康、経済活動、それらを円滑に進めることに没頭していた。  ほかに心をもっていかれることのない生活を虚しいと思ったこともなかった。  しかし、絵美子と接するようになってから、自分の中に大きな欠落があるような気がしてきた。  それは気づかなかったものなのか、見ないようにしていたものなのか、それは自分でもわからなかった。
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