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◇◇◇◇◆
情報処理の授業でクロスリファレンスという機能を習った。相互参照。
ページ数が増減したらリンクさせている目次のページ数も自動的に変わるとか、違う単語を共通番号の脚注で説明させるとか、そういうやつ。
なんだか俺達のことみたいだ。
彼女がリセットすることを選択したら、強制的に俺も飛ばされてしまう。どんなにその世界に愛着があっても。
何度も一緒に過ごした時間が上書きされる。いっそ記憶ごと上書きしてくれればいいのに、記憶だけはしっかり残り続ける。上書き保存か別名保存か。俺にはそれも選べない。
そして、記憶が積み重なるほど、彼女への想いも募っていく。
もしタイムスリップしても、俺は俺だから同じことをする。そう思っていた。
でも、情報があれば対応も変わる。記憶は重要な情報だった。
何を言ったって無駄。ずっとそう思っていた。
でも、実際は違う。俺の行動で、投げかける言葉で、彼女の反応は変わった。前提が変われば、結果も変わるのだ。
五回目の世界もリセットされようとしている。
その時、俺の足元に黒猫がまとわりつき、にゃあと鳴いた。
泣けばいいってものじゃ……。
幼い頃、何を言っても無駄だと学習してから、訴えることをやめた。
俺はもう、幼く無力な子供ではない。
そう思っていたはずなのに、結局、俺はただ泣き叫ぶことしかできなかった。
正直、無様としか言いようがなかったけど。有紗は今も俺の側にいる。
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