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「んんっ!」
私の声が大きかったからだろう、横井くんの表情が不安げになる。
「大丈夫……?」
「うん……」
「よかった……」
横井くんはそのまま全て挿れてしまうと、ほっとしたように息を吐く。
今回はそこまで痛くない。今まで横井くんとの初めては、毎回すごく痛かった。
今回は初めてなのに、横井くんがすごく丁寧で、上手。
今回は。
五回目の「初めて」だ。どうしても、こうなってしまう。
◆◇◇◇◇
「地下書庫に入りたいんですが」
「学生証の提示とご記入お願いします」
カウンターで学生証を見せ、示された台帳に入室日時と氏名を記入する。
山内有紗
私は自分の名前が少し苦手だ。ありさという音はなんだか可愛らし過ぎる気がするし、漢字は雰囲気が美人過ぎる。要は名前負け。友達からも「山ちゃん」と呼ばれることが多い。キャラ的に安心。
でも、名前を書くのは結構好き。意外とこの名前、見ない。
高校時代、図書カードへ最初に名前を書くのはひそかな楽しみだった。一番乗りになることが多かったから。まだ誰も気づいていない銀世界にそっと足を踏み入れるようなもの。
品揃えがそこまでよくなかったし、ちょうど私の卒業と同時に新校舎に移転する予定だったからか、図書室はさびれていた。私は偏った蔵書からのんびり掘り出し物を探すのが好きだった。
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