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地下書庫への階段を下り、ドアを開ける。古い蔵書がここに集められている。私はここが好きだ。古い本の匂い、知へのアプローチ。高校の図書室と似た、居心地のよい、静かな空間。
奥の方から人影が近づいてくる。横井くん。研究資料を探しているのか、単純に本が好きなのか、そこらへんはわからないけど、たまに見かける。
地下書庫に来る人はほとんどいない。もしかしたら今ここにいるのは私と彼だけかもしれない。とはいえ、図書館だ。私語厳禁なので、頭だけ下げる。向こうも会釈を返してくれた。
横井勇登くんは高校時代の同級生だ。進路別に分かれた二、三年で同じクラスだった。私大文系クラス。
彼ははっとするほど綺麗な顔立ちをしている。ふとした時の目線が、流し目のようで色っぽい。私は面食いなので、近くで見ることのできた日はラッキーだなと正直思っていた。
常に女の子が近くにいて、彼女も途切れないと噂だったので、同じクラスといっても別世界の人という印象しかない。必要事項以外に話をしたことはないし、話したいとも思わないけど。そもそも無口で何考えてるかわからない人だし。観賞用。眼福。
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