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しばらく地下書庫で過ごした後、図書館を出ると、少し離れたところに黒い塊がいた。なんだろう? 近づいてみると、子猫だ。田舎だからか、たまに動物が紛れ込む。
猫は結構好き。こっち来てくれないかなあ。
「にゃーん」
ちょっと甘えた鳴き真似をしてみると、黒猫と目が合った。と思ったら、露骨にそらされる。なんだか鳴き真似をしたこっちが馬鹿みたい。でも、そんなツンとした態度も似合う、綺麗な猫だ。
……嫌だったら逃げるよね。きちんと挨拶したら来てくれるかな。
「こんにちは」
ピクリと猫が反応したので、おっと思い、片っ端から挨拶の言葉を投げてみる。
「ハロー! ニーハオ! チャオ! グーテンターク!」
あと何語があるかな? 日本語、英語、中国語、イタリア語、ドイツ語ときたから……
「ボン……ジュール?」
私の挨拶に応えるようににゃあと鳴いて、黒猫は近づいてくれた。そっとなでるとゴロゴロと喉を鳴らしてくれる。可愛い。
ボンジュールの黒猫は図書館の近くに住み着いたみたいで、それからもたまに見かけるようになった。連れて帰りたいけど、うちのアパートはペット不可物件だ。
まあ、実際飼うとなると、いろいろ大変だろうし。遭遇した時に可愛いと思うくらいで、きっとちょうどいい。
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