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大学二年の秋。気乗りしない飲み会の席、近くのテーブルで山内さんを見かけた。たまに目が合う。これは千載一遇のチャンスなのではないか。
地下書庫で遭遇した時も思っていた。おそらく俺の顔は気に入られている。利用できるものは利用しよう。なんとなく雰囲気を作るのは得意だ。二人きりになれたらどうにかできる気がする。
ギリシャ語で時間にまつわる神的な存在は二つ。一定間隔で流れる時間を神格化したクロノスと、素晴らしい瞬間や主観的な時間を司るカイロス。
チャンスの神様には前髪しかない、なんてよく言うけれど。これはカイロスのことだ。カイロスの後頭部には髪がない。躊躇したらカイロスの髪はつかめない。この一瞬を逃してはならない。
部屋に連れ込むことに成功し、本懐を遂げた。彼女が初めてで、ちょっとびっくりする。このくらいの歳なら、経験しているものだと、無意識に思い込んでいたから。爛れた生活を送っている自分に気づく。
すごく痛そうだったけど、申し訳ないけど止められないから、せめてなるべく早く終わらせようと思った。
彼女はこんな風に成り行きですべきではなかったと、後悔しているように見受けられた。なんだかぎこちない。
どうすれば気持ちが伝わるんだろうか。そんな努力はかなり前に放棄していた。言っても無駄だし、相手のこともどうでもよかったから。
でも、山内さんはどうでもよくない。
これから時間はたっぷりある。後で考えよう。そう思いながら眠りに就いた。
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