ユートピア Eutopia

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 翌日、目を覚ますと山内さんの姿はなかった。  俺はどうすればいいんだろう。昨夜の続きを考える。  図書カードで名前を見て気になっていたと、読んだ本の話がしたいと、SF映画を一緒に見たいと。そんなくだらない話をしてもいいのだろうか。そもそも彼女は俺自身にそこまで興味がなさそうなのに。なにより連絡先も知らないから、どうすればいいのかわからない。  彼女の残り香がした。まだ出て行ってから間もないのではないだろうか。  その時、脳裏に大学の図書館が浮かんだ。まるで、カッサンドラが未来を予知したように。  考えても埒が明かない。昨日聞いた彼女の住む町の方角へ追いかけることにする。確かに大学を通り抜けるのが最短ルートだ。  急いで駆け付けると、はたして図書館の近くに彼女はいた。声を掛けようと思った瞬間。 《リセットしますか?》 《はい》  天からの声、なんだろうか。無機質な問いに、山内さんが是を唱える。  気づけば大学の入学式に俺は戻っていた。呆然とする俺をよそに、右腕のクロノグラフは、巻き戻された時を再び刻み始める。
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