98人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、目を覚ますと山内さんの姿はなかった。
俺はどうすればいいんだろう。昨夜の続きを考える。
図書カードで名前を見て気になっていたと、読んだ本の話がしたいと、SF映画を一緒に見たいと。そんなくだらない話をしてもいいのだろうか。そもそも彼女は俺自身にそこまで興味がなさそうなのに。なにより連絡先も知らないから、どうすればいいのかわからない。
彼女の残り香がした。まだ出て行ってから間もないのではないだろうか。
その時、脳裏に大学の図書館が浮かんだ。まるで、カッサンドラが未来を予知したように。
考えても埒が明かない。昨日聞いた彼女の住む町の方角へ追いかけることにする。確かに大学を通り抜けるのが最短ルートだ。
急いで駆け付けると、はたして図書館の近くに彼女はいた。声を掛けようと思った瞬間。
《リセットしますか?》
《はい》
天からの声、なんだろうか。無機質な問いに、山内さんが是を唱える。
気づけば大学の入学式に俺は戻っていた。呆然とする俺をよそに、右腕のクロノグラフは、巻き戻された時を再び刻み始める。
最初のコメントを投稿しよう!