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◇◇◇◆◆
《リセットしますか?》
《はい》
ああ、またリセットされた。全力で図書館の前まで走ったのに。
俺はまた大学の入学式会場にいて、絶望的な気分になる。
今回の流れはものすごく気に入っていたのに。ようやく好きだって言えたのに。やっと俺自身に少し関心を持ってもらえた気がしたのに。
どうせなら、中学の入学式まで戻ってくれればいいのに。そしたら彼女と同じ高校も、同じ大学も、選ばない。
下手に彼女の近くにいて、上手くいきそうになるから、期待してしまうんだ。素晴らしい未来を。
先の時間があるとは限らない。
俺には続きを選べない。
彼女がリセットすることを選択すると、それまで一緒に過ごした世界は、まさにどこにもない場所になってしまう。
このままがいいと、俺がどんなに強く望んでいても。
嫌いだった自分の名前も君から呼ばれれば嬉しく感じるのだと、初めて知った。
セックスがこんなにも精神的に満たされるものだと、初めて知った。
時よ止まれ、お前はあまりに美しい。何度もそう叫びたくなった。
リセットされるたびにものすごく精神をえぐられる。彼女にとって俺と過ごした時間は、消したいものなんだと思い知らされるから。
どんなにがんばって走っても追いつくことができない、アキレスと亀。
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