98人が本棚に入れています
本棚に追加
「二次会カラオケ行くけど、どうする?」
「ごめんね。明日バイトがあるから、やめとく」
「そっかー、残念。また飲もうね」
「うん」
笑顔で嘘を吐いた。明日は何もない。
話に入ることはできなかったし、私は帰った方がみんなも楽しく盛り上がるだろう。
一人で帰ることにする。今の時間ならまだバスもあるけど、歩けない距離じゃないし、酔い覚ましがてら歩いて帰ろうかなあ。そんなことを考えていたら、声を掛けられた。
「山内さん」
振り返って、非常にびっくりする。
近くで見ることのできた日はラッキー。そんな横井くんをもっと近くで見られるとは、思ってもみなかった。
「横井くん……」
「一人?」
「うん」
横井くんはちらりと腕時計を見た。
「もうこんな時間だし、危ないよ。俺も帰るだけだから。一緒に行こう」
最初に家の方向を聞かれ、それから私達はひたすら無言で歩いている。横井くんは無口だし、私も特に話したいことはないから。
少し暗い路地に入る。近道ではあるけど、普段だったらこの時間はやめておく、人通りの少ない道。
お酒が入っていたし、判断が甘くなっていた感は否めない。
最初のコメントを投稿しよう!