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「山内さん」
呼ばれたので顔を向けると、横井くんは歩みを止める。思わずつられて止まる。じっと見つめられているように感じてどきどきする。なんたって、相手は顔がいい。
「店内で俺のこと、見てたでしょう」
「そ、それは……」
ピーピングがばれてた。だって、つまらなかったし。横井くん、綺麗な顔だし。
「地下書庫でも、見られてたのは、気のせい?」
微笑んだ顔が、やっぱり綺麗で。
ぼーっとしていると、横井くんの顔が近づいてきて……唇を奪われた。
「え……。え、ええーっ!」
思わず叫んでしまう。だ、だ、だって、あの横井くんが! 私に! 路チュー!
私の顔を見て、横井くんはくすりと笑う。
「ずっと、キスしたかった」
「ず、ずっとって……」
店内でずっとそんなことを考えていたの? びっくりしすぎて何を言っていいかわからない。
「俺の部屋に来ない?」
ここはあまり人気のない路地だ。街灯も少ない。
薄暗い中、月光に照らされた横井くんの顔が、あまりにも綺麗で。まるで横井くん自身がぼんやりと発光しているかのよう。さらりとした髪の毛が陰影を作り、まつげが目の下に落とす淡い影は憂いと色気を醸し出している。
銀の光に引き寄せられて、目をそらすことができなくて。気づけば首を縦に振っていた。
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