第五話「運命は残酷なのよ」「そうだね」と応える僕は君の棺に

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 遺影は生前の彼女そのままだった。一年ぶりにしっかり顔を見て、ぬぐえない罪悪感で胃がしぼられるようにキリキリ痛みだす。  やっぱり、のこのこついてくるんじゃなかった。そう後悔したところで、 「この前も、女の子がひとり訪ねてくれたのよ」と、その人はフッと告げた。 「そのときに岬の日記を手渡したんだけど、無事に見せてもらえたか気になってるの」  彼女の日記は今、ボクの手元にあった。  でも、とてもそんなこと言いだせない。 『これを手に入れたのは偶然だった』  最初に会ったあの日、そう言った日向さんの声が脳裏によみがえる。  彼女もここを訪ねてきてたのだ。こんなにあっさり招き入れられたのは、これが二回目だからなのかもしれない。誰に見せる予定なのかは訊かなくても分かった。  相馬翔のことだ。ふたりは恋人同士だったのかもしれない。そう思うと、複雑な思いがねじれて渦巻いた。 「事故があった日、岬さんはどこに行こうとしていたんですか?」  訊きたかったことを、ボクは単刀直入に尋ねることにした。 「残念だけど、どこに行こうとしたかは分からないの。同じことをその子にも訊かれたわ」 (もう質問済みだったのか)  わずかに落胆しつつ、それはそうだろうと冷静な気持ちで思う。分からなかったから、ボクまで巻きこんだのだ。 「あの、ご迷惑じゃなければ、彼女の部屋を見せてもらえませんか」  踏みこんだ質問だと自分でも分かっていた。でも、ここで何か手がかりを見つけなければと思う気持ちもあった。  ここであきらめたら、もう何も見つけることはできないだろう。 「彼女があの日、どこへ行こうとしたか知りたいんです」  重ねてそう告げる。  それがボクにできる最後のことだと思ったから。 「娘の部屋はまだ前のままにしてあるの」  その人はそう言って微笑んだ。  泣きそうな表情がどうしようもなく、あの日の彼女に似ていると思った。
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