「閉鎖病棟に入院した日」

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「閉鎖病棟に入院した日」

私が閉鎖病棟に入院したのは、去年の11月23日だった。今でもはっきりとその時の事を覚えている。 母は今でいう毒親で、言葉の暴力と力の暴力が凄まじくて。それが原因で五年前に鬱を患って先生に処方された薬をずっと飲み続けていた。不安と不眠症。眠剤と抗うつ薬はどれも強くて、副作用で生理が止まる事もあった。鬱だったその病気が何か違うものに変わったと思ったのは、頭の中に音楽がずっと流れるようになったからだ。止めどなくずっと流れていて、眠る時も流れ続けていた。 自分でも訳が分からなかったけど、仕事が異常なほど集中できたからいいや、と思っていた。 いつもは50kgしか肉が切れないのに、その時は一日に70kg切れた。異常なほどハイだった。 頭と身体がずっと分離してて、手がただ勝手に動き続けていた。死ぬほどきついのに体が動き続ける。 自分でもこれは可笑しいと思っていた。元々まともではなかったけど、これは全く違うものだと思った。 入院する前日、いつもの眠剤を飲んでも眠れなくて。ずっと音楽が頭に流れていて気が狂うかと思った。 深夜の二時になっても眠れなくて、三時間金縛りにあった。右肘がパンパンに腫れたように痛かった。 幽霊のような姿が見えて、可笑しかった私はこれは祟りだと思って、塩を浴びるように振りかけて。 部屋の至る所に盛り塩をした。それで逃れられると思ったけど、朝になっても頭で音楽は鳴ってた。 会社の上司に今日は病欠で休むとラインだけして。パジャマのまま黒い上着だけ着て車を病院に走らせた。 入院する必要がある。何も自分の事が出来ない。そう思っていたのに、私は携帯と財布と好きな漫画一冊しかバックに入れてなくて、正常に考える事も出来てなかった。入院するには荷物が居るのに他人事のようにどこか思えた。自分の事をどこかの自分が遠くで見ていて、分離するように宙に浮いてた。
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