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「あのなぁ、だからって盗みを働いて金を手にしてもそれは所詮あぶく銭た。すぐに消えるさ。努力して抜け出そうとしないお前らが悪いんだ」
「なんだと……?」
ダスラの言い分にアンシュは腹の底から湧き起こる怒りを自覚した。立場の違いなどまるで考えもしないダスラは余程、世間知らずなお坊ちゃんなのだろうと。
「神の加護のない俺達はいくら頑張ったって貧しいままだと決まっているんだ。それに所詮、神に祈ったって腹は膨れないさ」
アンシュは吐き捨てた。ところがダスラはそんなアンシュに向かい、くっくと笑みをこぼす。
「おう、そうか、それは気が合うな。俺も神なんぞに頼ったことはないぞ。それに居場所がないのは俺も同じだ」
その一言は、ダスラという人間は上位カーストの身分に馴染んでいないのだとアンシュに気づかせた。本当にそうなのか、アンシュは試しにけしかけてみることにした。
「じゃあ一度、ここに住んでみたらどうなんだ。あんたが出来るってんならやってみろよ」
するとダスラは予想しなかった反応をみせた。空を仰いで笑いながら即答したのだ。
「はははっ、そりゃあ面白そうだ。じゃあ早速、そうさせてもらうぜ。それに折角だから、お礼としていいものをやろう。お前の努力次第で、少しはこの世界から抜け出せるかもしれねえぞ」
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