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数日後、一台のトラックがエンジン音を響かせてスラム街に入り、広場の中央に止まった。アンシュと少年少女が見つめる中、トラックから降りたダスラは同伴の運送屋に指示をし、積んだ荷物を広場に降ろさせた。人の背丈よりも高い、レンガ造りのかまど。
それからダスラ自ら荷台に戻り、別の荷物を運び出してきた。たいそう重たそうな木箱を担いできて、それもどっかと広場に降ろした。ダスラが蓋を開けると、そこには陶芸用のろくろが一基、収められていた。
「こいつが家賃の代わりってやつか、ダスラよ。で、どう使うんだ?」
怪訝そうな顔をするアンシュにダスラはにやりとして答える。
「アンシュ、陶芸の技術を身につけろ。この国では使ったクリ(チャイを飲むための陶器の湯呑み)は地面に叩きつけて割るのが常識だからいくらでも需要はある」
「そうらしいな。しかし一回使っただけでかち割るなんざ贅沢な話だよな、あんたらには常識かもしれねえがな。だがお前が言いたいのは、俺達にこれを使って使い捨てのクリを作れということか?」
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