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「ホーキンズ教授、魔塔のシルビィ様がお見えになりました。なんでも急ぎだそうです」
秘書のリアムが午後の紅茶を運んできた。魔塔のシルビィは、紅茶の時間をホーキンズが楽しみにしていることを知っていながら、その時間に訪問するのだ。嫌がらせを兼ねているのは明らかだった。肩まで伸びた黒い髪をかきあげ、少し尖った耳に引っ掛けては垂れる髪に、正直リアムは切りたくてしか
たなかった。秘書の見目は大事だとぬかすホーキンズ教授の命令で、切れないでいた。
ーー扉がパンと開いた。一陣の風が舞い込んだが姿はなく、せっかく整えたリアムの髪をいじる不届きな輩を、リアムよりも先にホーキンズによって縛り上げられた。どさりと倒れたときには、見えなかった姿が露わになり、木の細い蔓で縛られたアッシュヘアのシルビィが床の上に倒れていた。
「何をやっている! 魔塔は暇なのか?」
ホーキンズの怒鳴り声に、シルビィは平然と笑う。
「暇じゃないさ。今も急ぎだと伝えてあるのに、いっこうに客間に来ないから、こっちから出向いてあげたんだろ。感謝しろよ。あんたのお茶の時間を奪わなかったってことに」
「ーーで、急ぎとは何だ?」
「ーー魔剣が現れた!」
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