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しかしシルビィも、もとはといえば公爵家の次男であり、由緒正しい家柄の者で役職に就くことはできたはずだった。天真爛漫といえば聞こえはいいが、父親の公爵とは反りが合わず反抗ばかりしていた。素行の悪さが目立つ次男を体良く家から出すために、魔塔の主人に推薦したのは他でも公爵なのだ。
魔塔の主人になってからというもの暇さえあれば、こうして魔法学アカデミーへ赴いては悪戯に余念がない厄介者だった。
「どういうことなんだ! 魔剣が現れたなどと。冗談ではすまされないぞ!」
ホーキンズの鋭い目がシルビィに向けられる。皇族の剣士団すら恐れるホーキンズを前に、客室のソファの上で横になり、シルビィは鼻をほじって悪びれた様子もない。
「魔剣が現れたなんて、嘘でいえるわけがないだろ!」
「しかし見たこともないくせに、どうして、そういえるのだ」
どちらも譲らずに睨み合いが続いた。
「ゆらりゆらりと光って、剣が浮遊していたというやつが出てきたんだ。ま、俺も調査に乗り出したさ。カウア地区の住人で酒場で飲んだ帰りに見たという男は、それこそ皇室剣士団に所属するゼアノなんだ。しかし、やつは昔から酒飲みでホラ吹きだからな、信憑性に欠ける。ーーけど、浮遊していたとは、似ているだろ? 門外不出のあんたの爺さんが書いた『魔法と魔剣』に載ってる、魔剣についての箇所に」
ホーキンズは大声で笑った。そして考え込むように顎に手をやり、ようやく口を開いた。
「似てるって? 祖父の書いたものも言い伝えを拾い集めたものだ。真実とは限らん。ーーだが……準備をしておいてもよかろう」
シルビィとホーキンズは互いに頷いた。
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