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私は一気にまくしたてる。今までの経験上わかっているのだ。私は彼女に非常に甘いと思われているし、それも事実。私がかわいいと言っただけでは彼女に響かない。だから、違う方向からアプローチするしかないのである。
「初デートで、動物園なんて選ぶような人がさ。自分の感情をあんたに無理やり押し付けて、傷つけるタイプには見えないけどね……私には。それに、私は瑛南のことよく知ってるからいうんだけど。あんた、元々は草食系はそんなに好きじゃないみたいなこと言ってたでしょ。それなのにデートしたいとか、嫌われたくないと思ったのはなんで?その人の、中身に魅力を感じたからじゃないの?」
ちょっとかわいくないくらいで、嫌われるかもしれないなんて。
そんなことばかり思っているのは、かえって相手への侮辱ではなかろうか。
「その程度で捨てるような男なら、こっちから願い下げよ。あんたから別れを切り出しちゃえばいい。でも、そうじゃないなら。……瑛南は瑛南が好きになった人を、もっと信じたらどう?」
「さっちゃん……」
「雨なんか、降らなくてもいいでしょ。晴れてた方が、動物園は絶対楽しいよ。むしろちゃんと、てるてるぼうずでも吊るしておきいなさいって」
「……うん」
私の言葉は、少しは彼女に届いただろうか。やがて、どこか安心したように笑う瑛南。
「ありがと。……うん、さっちゃんの言う通りだ。アタシはもっと、あの人を信じなきゃ。彼にも失礼ってなもんだよな」
「そうそう。頑張って頑張って。ほら、そろそろメニュー開きなよ、ここのパフェ美味しいんだから」
「おう!」
ひまわりが咲いたような笑顔が素敵で、嬉しくて。同じだけ、私はちくりと痛む胸に、気づかぬふりをしたのだ。
そう、私はこのままのポジションでいい。親友だからこそ、彼女にこうして信頼してもらえて、隣にいることを許されているのだから。
ーー瑛南が幸せなら。私は、それ以上のことなんてないんだから。
心に降りそうな雨を振り払って、私も精一杯の笑顔を作ったのだった。
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