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 両親に学園で倒れたと聞いてから、2日がたった。    私の目が覚めた次の日、両親が呼んでくれた医者に診てもらい、後頭部にできたコブも小さくなったのだけど。胸の痛みは治らず。どうして倒れたのかも思い出せずにいた。 「ロレッテはなにも心配せず、ゆっくり寝ていなさい」  と、お父様は言うけど。ここ数日ものあいだ寝ているばかりは暇なので、本を取りに屋敷の書庫に向かった。書庫に向かう途中、メイド達が清掃のために開けた窓から、春の心地よい風がはいり、花の香りを届けた。 (天気がいいから庭を散歩して、テラスで読書するのも良さそう)  ……あの日の私も庭園に咲く花々を眺めらながら、学園の別棟に続く、渡り廊下を歩いていたわね。 (どうして、だったかしら?)    確かあの日は。オルフレット様に用事があると伝えられて、お昼休みを一人で過ごしていた。お昼休みの終わり頃、書庫で借りていた本の期日が本日までだったと気付き、急いで別棟の書庫へと向かった。    私が通う貴族科は位の高い貴族ばかりで、書庫で本を借りても無くす人が多かった。そして、無くしたら買って返せばいいと考えている人ばかり。  だから書庫員に期日までに本を返さないと、罰で1ヶ月本を貸し出ししてもらえなくなる。それなら王城の書庫で読めばいいと、簡単なことも言えない。    王城の書庫には国の機密文書、持ち出し禁止の魔導書などが保管されている。だから書庫に入るには国王陛下、王妃、王子達の許可を取らなくてはならない。許可を貰って書庫に入っても周りの目があり、落ち着いて読書できないだろう。  その点学、学園の書庫は種類も揃い、落ち着いて読める。何より、1人になりたいときによく利用もしている。だから、学園の書庫が1ヶ月も利用できなくなるのは、私にとって死活問題だ。  早く返さないと……  え? ええ⁉︎  渡り廊下から見える庭園で婚約者のオルフレット様と、噂のメアリスさんが仲睦まじく抱き合っていた。その姿は他の生徒も見ていたらしく、喜びの声をあげ手を叩くもの、茶化すもの、騒ぐ声が……段々と、遠くに聞こえた。  ……目を覚ますと自分の寝室のベッドで寝ていた、私はオルフレット様とメアリスさんの抱き合う姿を目撃してしまい、ショックで倒れてしまったのね。  初めてお会いしたときから、お慕いしていたオルフレット様に好きな人ができてしまった……あ、ああ、胸がいたい。  氷の王子と呼ばれ。周りにも自分にも厳しく、普段から表情の変わらないオルフレット様……ううん、殿下。学園に入学してから噂のメアリスさんといるときは、笑みを浮かべるときもあった。  私、オルフレット殿下に婚約破棄される⁉︎   「い、いやぁ――!!!」    書庫へと繋がる屋敷の廊下で、私は頭を抱えて泣き叫びをあげた。掃除をしていたメイド達は駆け寄り、ちょうど戻ってらしたのか。私の悲痛の叫び声を聞いて、やって来たお父様とお母様は手を伸ばし……私を抱きしめた。
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