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聞けば聞くほど、それは不思議な話だった。
女神のミスにより間違われた転生……私が今いる世界は、ほんとうはアヤちゃんが来るはずだった乙女ゲームに似た世界。
(彼女は乙女ゲームが好きだったものね)
乙女ゲームに詳しい、アヤちゃんがこの世界に来ていたら私よりも、もっとスムーズに話が進んだのかな? 私が何も知らないせいで……ううん、ダメよ。いまは私の事よりも眠ってしまわれた、オルフレット様たちをどうにか助けなくてはならない。
(大切な、大好きな彼の目を覚ましたい……)
あの図鑑は? もし、あの図鑑にヒントがあるのかも。だとしたら頭痛がなくなった今、もう一度見てみなくてはならないわ。
それなら早く戻って。
「女神様、記憶のことも転生のこともわかりました。私は早く元の世界に戻り、彼を目覚めさせる解毒薬を探さないといけません」
そう伝えると、女神様は眉をひそめた。
「ええ、そうね。でも、あなた様に酷なことを申しますが……根本的な乙女ゲームの内容を知らない、今のあなた様の力では解毒草を探す事ができません」
「えっ?」
いまの私の力では無理?
「だとしたら、どうすればいいのですか?」
「お詫びついでに一つ提案があります。あなた様に授けたスキルを私に一つ返上していただき。解毒草だけではなく、植物全種を見極める力を身につけるのはどうでしょうか?」
植物全種を見極める力?
そのスキルが私にあれば解毒草を見つけれる?
「そのスキルがあれば……見つけれるのなら。女神様、お願いいたします」
「では、あなた様の返上するスキルを一つ述べてください」
女神様に返上をするスキル?
そんなの一つしかない。
「彼の声が聞こえるのがスキルなら、それを返上いたします」
「……あ、そのスキルでいいのですね」
「はい、それでお願いします」
やさしいオルフレット様の声をたくさん聞いた。
本来なら私にない力……もう必要ない。
「わかりました――それと、あなた様は色々とファンタジーについても知識不足のようです。魔法発動の条件を詠唱が要らず、イメージと言葉だけで使えるようにいたしましょう」
魔法の詠唱? イメージと言葉? よくわからないけど、授かった後で試してみましょう。
「ありがとうございます、女神様」
「では、スキルを交換を行いますので、あなた様は目をお瞑りください」
言われた通りに目を瞑ると、女神は私の額に人差し指を当て、すぐに離した。
「あなた様のスキルの書き換えが終了いたしました」
「あ、ありがとうございます。これで解毒草が探せるんですね」
解毒草を見つけることが出来れば、オルフレット様とみんなを助けれる。
「ほんとうに、ほんとうに……サイトウアヤ様、私のミスですみませんでした」
私は深く頭を下げた女神に首を振る。
「いいえ、謝らないでください。私は後悔はしていません。むしろこの世界でたくさんの大切な人に出会えて、心から愛するオルフレット様に出会えたのですもの……あ、そうだわ」
「なんでしょうか?」
これだけは聞いておかないと。
「彼女は……アヤちゃんは幸せに過ごしていますか?」
「はい。アヤ様はあのあと無事に転生されて、今は病気をすることも無く、元気に、幸せに過ごされています」
そっか……転生して元気に、幸せに過ごしているんだね。アヤちゃん――私もこの世界で元気に過ごしているよ。
「女神様、私をもとの世界に戻してください」
そう女神に伝えると、私の体が光り始めた。
「サイトウアヤ様の幸せを、常に願っております」
消える前に私の幸せを願うと、女神の声が聞こえた。
❀
意識が浮上する前……誰かが私の額をペチペチ叩きながら、ロレッテと私の名前を呼んでいた。
「ロレッテちゃん〜おーい、ロレッテちゃん〜目を覚まして」
「ん、ん?」
ペチン!
「?」
「あ、目をしました……よかった、いきなり倒れたからびっくりしたよ〜君の父がソファに寝かせながら、ショックで倒れたんだなって言っていたけどぉ、大丈夫?」
「う、うん大丈夫」
「そっかぁ、よかった」
りゅうちょうに言葉を話す、モコモコの子犬君。
うちの庭にも遊びに来ていた子犬君。
今はオルフレット様が飼いはじめた子犬……
「……君、シ、シルベスター君だよね?」
「そうだよ〜シルベスターだよ」
可愛い瞳を私に向けた。
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