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「あら、オルフレット殿下と仲の良いメアリス様をいじめる、悪役令嬢がいらしたわ」 「ダメよ、近付いたら。わたくしたちが怪我をしてしまいますわよ」 「クスクス、おっとりした見た目のくせに、やる事が怖いわ」 「ほんと怖い」  ……また、悪役令嬢。  王都にあるコローレ学園に入学して3ヶ月が経つ頃、とある噂が流れ始めた。私の婚約者で、第二王子のオルフレット・ウルラート殿下と仲が良いと言われている、男爵令嬢メアリス・アーモンドを、私が影でいじめているというもの。  また、2人の仲に嫉妬した私が偶然をよそって、メアリスさんを階段から落とそうとしたなど。どれも、身に覚えがないことばかり言われ始めた。いくら『その様なことはしていない』と弁明しても、婚約者のオルフレット様にさえ信じてもらえない。 「ロレッテ嬢、やっていないにしても君に隙があるから、周りに悪役令嬢などと呼ばれるんだよ」  オルフレット様まで、私のことを悪役令嬢と呼んだ。  ❀ 「……クッ」  ズキッと頭に走る痛みで目を覚ますと、私は何故か自分の寝室のベッドに寝ていた。どうして、ここに居るのかが訳が分からず、側にあったメイドを呼ぶ"呼び鈴"をリリンと鳴らす。  ほどなくして、鳴らした鈴の音が聞こえたのだろうか。こちらに近付く足音が聞こえ、寝室の扉が大きな音を立てて開いた。  え?    今、寝室に訪れたのは私の専属メイドではなく、私の両親――デュック・コローネルとミンヤ・コローネルだった。  その、2人は足早にベッドの側までくると、私の手を優しく握った。 「ロレッテ、どこか、痛いところはないかい?」 「ロレッテ……吐き気とかはない?」 「……吐きけ? 痛いところ?」  両親にそう聞かれて、急に後頭部が痛みはじめた。どうしそんな場所が痛むのかわからず、その箇所を手で触るとコブのような物が出来ていた。 「お父様、お母様、後頭部にコブが出来ていますわ」  ズキッ⁉︎ とコブが痛み。それと同時に悲しくて、胸がズキズキ痛んだ。 (この、胸の痛みはなに?)  痛む胸を押さえる私に、デュックお父様はため息を一つはいた。 「その後頭部の痛みは……今日、ロレッテは学園で倒れたからだよ」 「倒れた? どうして、私は学園で倒れたのですか?」  倒れた原因を思い出そうとしても、頭の中はぼんやりしていて、倒れたときの記憶を思い出せなかった。その私の様子に、お父様とお母様は驚いた表情を浮かべた。 「どうして倒れたのか? ロレッテは倒れたときのことを、覚えていないのかい……?」  お父様の問いにコクリと頷く。 「ええ……倒れたときの状況を思い出そうとしても、頭の中がぼんやりしていて……思いだせないのです」  そうか。と、お父様は頭を優しく撫で。 「思いだせないのなら、無理に思い出さなくていい。さっきコローレ学園に欠席届と、王妃教育は体調不良のため休むと王家に連絡をいれたから」 「え、いいのですか?」 「いいのよ、ロレッテ……いまはゆっくり休みなさい」  両親はそれだけ伝えると、私をベッドに寝かせて「何かあったら、呼び鈴を鳴らしなさい」と寝室から出ていった。
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