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 スーパーの袋が指の間に食い込む。  安かったから2リットルの水を二本買ったのがよくなかった。 「優志がいるときに買うべきだったな」  真優は駅前の通りをゆっくり歩いていく。  そして、いつものところで足を止めた。  今日は居るかな、あの人・・・ 「居た」  真優の気持ちがぐんと持ち上がる。 「素敵・・・」  その人は真優より少し年上に見えた。二十歳ぐらいだろうか。  真優より背が高く、でも、体はずっとシェイプされている。  体だけではなく、顔のラインもシャープだ。中世的な美しい顔は、宝塚の男役を彷彿とさせた。  天井からぶら下がったサンドバッグを殴る腕に浮かんだ筋肉の筋に、真優は目を奪われる。  女でもあんなふうになれるんだ。  真優は彼女に目を奪われる。  あんなふうに私も強くなりたい。そしたら、あいつを・・・  汗で濡れた短い髪を揺らしながら、彼女はサンドバッグを殴り続けている。 「髪、切ってみようかな」  つぶやいてみるが、実際は切るつもりはない。ショートカットが似合う顔ではないし、後ろで一つにくくれる長さがあるほうが、なにかと楽なのだ。  彼女が動きを止めて、汗を拭う。  その仕草は男らしくあったが、女を捨ててはいない繊細さがあった。  そんなところも憧れちゃうと思って見ていると、彼女と目が合った。  真優は慌てて目を反らす。  何事もなかったように、スタスタと歩き出す。急に、忘れていた指に食い込む荷物の重さを感じた。
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