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 キックボクシングのジムを離れ、足を緩める。駅から離れたせいで、人通りもぐんと少なくなっている。 「びっくりした」  目が合うのは初めてではなかったが、今日のように彼女からしっかりと目を合わせてきたのは初めてのことだった。  存在を認められてうれしいような、恥ずかしいような。  しかし、いつも盗み見ていることをとがめられているのかもしれないと心配でもある。  そんなことを思いながら歩いていると、  今日は八時までに帰れるから  とメッセージがはいった。父の達也からだ。弟と三人のグループラインへの投稿だった。  じゃあ、一緒に夕食だね  返信すると、だね、と優志が続いた。  緩んでいた気持ちが一気に固くなるのを感じた。  真優は小さく深呼吸して、スマホの電源を切り、また足を早めた。
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