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「ミーヤンはね、お母さんに嘘をついたの」
「嘘を?」
「『先生が、順番にお花を持って来なさいと言われた』とお母さんに言ってしまったの」
「そうだったわね……」
美羽はお母さんに嘘をついたことをハッキリ思い出した。お母さんは、渋々、安い花束を買って持たせてくれたのだ。美羽は、やっと花束を先生に渡すことができたのだった。
「先生は『まあ綺麗ね! ありがとう!』と言って、いつものようにうれしそうに花を生けて、教室に飾って下さったの」
「そうだったよね」
「ミーヤンはとても幸せな気持ちだった。でもね……」
「そうね、『でもね……』だよね」
美羽のお母さんが、幼稚園に電話をかけて「順番にお花を持って来なさい」と本当に先生が言われたのかを確かめたのだ。彼女は子どもを信じることができない人だった。
その日、家に帰った美羽は、嘘をついたと言って、お母さんにきつく叱られたのだった。
「また嘘をついて!」
「また、じゃないもん。初めてだもん!」
「屁理屈はいいの。本当にダメな子ね」
―すっかり忘れていたけれど、確かにそんなことがあったー
―ミーヤンは、やっぱり幼い頃の私なんだ……―
美羽は幼い頃の悲しい記憶が蘇った。
「ミーヤンは、先生の喜ぶ顔が見たかっただけなのに」
「うん……」
「お母さんは何をしても喜んでくれないから。レイコ先生だけでも、笑っていてほしかったの」
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