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9907dc2d-0009-4ef7-8043-69977f0b7cbf 朝、目が覚めた瞬間から、美羽(みう)はため息をついた。なんとかベッドから降りて、洗面所に向かう。鏡のなかには、卵型で色白のゆで卵のような顔に、小さな目、鼻、口が、真ん中にキュッと集まった顔が映っている。少し、疲れ気味かも知れない。 美羽は、奨学金を使って大学をやっと卒業した。食べていくために、好きでもない仕事を毎日続けて、もう二十六歳になる。 ―だからと言って、何が好きかわからない。何でもすぐに諦めてしまう。何のために生きていくんだろうー 朝からため息ばかりつきながら、美羽は家を出た。駅に向かう道を歩いていると、花屋の店先に若い母親と小さな花束を大切そうに持った五、六歳の女の子が立っているのを見かけた。 女の子は、母親に結ってもらったのだろう、長い髪を三つ編みにしていた。淡いピンク地でフリルのついたワンピースもよく似合っている。花束を買ってもらってうれしそうな女の子を母親が優しい笑顔を浮かべて見つめているのだ。 その時、美羽は胸がギュッと締め付けられるように苦しくなった。その締め付ける感覚は、美羽のなかでどんどん大きくなっていく。 ―どうして涙が出そうになるんだろう?― 美羽は奥歯を噛みしめて、ぐっとこらえた。人前で泣いてはいけない。そう躾けたのは、美羽の母親だった。
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