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01
いま、私は砂漠にいる。まさに砂漠に。
夢見て出てきた東京は砂漠だった。誰かが歌ってたみたい。まさに東京砂漠。
思えば、何の武器も持ってない。
学歴もない、コネもない、美しい顔も裸になればハッと人目をひくような体のラインも持ってない。
平凡な女が都会に一人で出てきて、生きていくことなど不可能だったのだ。
中部地方の片田舎に住む、夢だけで頭をぱんぱんにした何の才能もない、若さしかない女が、名もない短大に進み社会に出て働き、ごみくずのように扱われて捨てられる。
それの繰り返し。
その繰り返しをしてるだけで、すっかり時代は流れ、都会で生きていくことはどんどん難しくなっていった。
私は年をとり、もともと低かった商品価値(みたいなもの)もどんどん低下している(急低下している)。
もう後がない。なすすべもない。
そこへきてコロナだ。
私は一年半、派遣で働いていたコールセンターを首になり、新しい仕事を探したが、雇ってくれるところは見つからない。
失業保険もそろそろ切れる。
やばい、やばい、やばい。
思えば何度もこんなことを繰り返している。
今回もなんとかなるとも思えるし、今回はもうだめかもとも思う。
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