6人が本棚に入れています
本棚に追加
「それでは審査員の方に講評を聞いてみましょう」
髪の白い審査員がマイクを持った。
「まずはグランプリの三石さん。難しい曲を難しさを見せないように歌ったところが素晴らしかったですね。技術も優れていました。ただの素人とは思えません。何かトレーニングをしていましたか?」
凛が照れ笑いをした。
「半年間、ボイストレーニング教室に通いました」
咲は衝撃を受けた。凛も同じ努力をしていたのか。これでは追いつくことはできない。
「プロデビュー、したいですか」
「ええと、」
凛が困った顔をした。
「親が反対するので。もう一度、同じような大会で優勝したら考えてやると言われました」
「そうですか」
別の審査員が、凛に白い紙を渡した。
「これは、弊社ラクミュージックが開催する新星歌手コンテスト中学生部門参加票です。開催日は5月。三石さんは予選免除で、本選からのスタートとします。ぜひ参加してください」
紙を渡し終えると、審査員が今度は咲の方に視線を投げかけた。
心臓がドキッと跳ねあがる。
「今回は三石凛さんという破格の才能に出会いました。でも、まだこの会場に原石があります。霧島咲さん。三石さんが出場しなければ、グランプリはあなたでした。あなたは下手なアイドルより上手い。今回は相手が悪かったとしか言いようがありません。霧島さん、あなたも本選からのスタートでコンテスト参加を推薦します。二人とも、ぜひ頑張ってください」
プロ主催のオーディッションで評価された。
咲は嬉しさで心がぐん、と暖かくなるのを感じた。
最初のコメントを投稿しよう!