夢をみる猫

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 とてもじゃないがもう今日は何も出来ない、そのまままっすぐ家に帰った。  玄関で母に何か言われた気がする。  まるで耳に入らず頭の中は真っ白なまま、自室で布団を被る。  ラミ君だけのつもりだった私には、この一日は余りにも複雑すぎた。  まとまらない思考、それでも考える。  私はどうする?どうしたい?  私は、私は正直、夢をみていたい。  このまま。今の場所から進みたくない。 『素敵なおじ様、気立ての良いお嬢さん』  ではまたお会いした時は、なんていう猫の関係のまま、ずっとこのまま、夢を見続けていたい。  でもラミ君を挟まなければ、猫カフェを出てしまったら、夢は現実になってしまう。  例えば交際する仲になって、生活や収入の話を、私はおじ様とするのだろうか。  やがてくる母の介護は?もっといえば、いずれくるかも知れぬおじ様の介護は?  そんな話を、私はおじ様と、したいのだろうか。  勢いで恋をする年齢は、もうきっとずっと前に通り過ぎてしまった。 「今更みっともないし…」  と、ここまでが大人の私である。 「独身かよぉ…」  毎度、猫カフェにてラミ君に剥がされる面の皮。  つまり、中身があるという事で。  つまりそんなものはごく簡単に破れる、皮でしかないのだ。 「マジかよぉ…」  だから今度もし、もしも偶々、会えたなら…  きっと言おう。  でも……なんて言おう?  私はきっと、なんて言おう?  媚びた猫のようなぎこちない顔で、きっとおじ様に、きっと。 「        」
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