出会い

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出会い

ザーザーと波がなった。 砂浜に打ち上げられた人間の持ち物を僕はひろう。 特に興味がわかなかったので、そのまま投げ捨てた。 さぁ、家に帰ろう。 と僕はそこで足を止めてしまった。 僕の足元には怪我をして血を流したキジの姿がある。 僕はしゃがんだ。 「ねぇ、大丈夫?どうしてそんなに血がでちゃったの」 キジは体をわずかに震わせてはいたが、何も答えなかった。 僕はキジを両手ですくい上げるとそのままゆっくりと家へ向かう。 「かあちゃん!この子っ。怪我してたの!手当してあげて」 僕は家に帰るとすぐさま叫んだ。 かあちゃんはおやまぁ、とキジの方を見るとすぐに救急箱を持ってきた。 「鬼郎、このキジどうしたの」 「砂浜に打ち上げられてたの」 僕はタオルを敷いた机にそっとキジを寝かせた。 「そう…この傷は鬼の世界の弓矢じゃないね。これは人間の弓。」 かあちゃんはキジに包帯を巻きながらそっと呟く。 僕は人間ってひどいことするもんだなぁ、と思いながらその手当を見ていた。 僕は鬼の子鬼郎。ちゃんと立派な角が二本生えてる。 でもなんも悪さはしないよ? ただ人間と姿が違うだけで。 一ヶ月後 「鬼郎くん、ありがとう。おかげで私は元気になりました」 キジはすっかりきれいになった体で飛び回った。 僕はよかったね、と叫ぶとキジは嬉しそうに鳴いた。 「キミはこのあとどこへ行くの〜?」 「もっと広い世界を見に飛び立とうと思います」 キジはそう叫んでから僕の肩に止まった。 「そっか、頑張ってね!」 「はい、ありがとうございます!」 キジはニッコリ笑うとそのまま飛んでいく。 僕はキジが小さくなるまでずっと手を降っていた。 「鬼郎?キジは?」 家に帰るとすぐさまかあちゃんはそう聞いていた。 一ヶ月とはいえど急にいなく鳴ると寂しいもんだ。 「飛んでいっちゃったよ。広い世界を見たいんだって」 そっか…とかあちゃんはつぶやく。 僕は机に座ってそのまま無言で夕ご飯を待っていた。 かあちゃんが泣いてるのが分かったから。
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