ブルーアイキャッツ

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 私の大好きだった彼は、突然姿を消した。  これだけ聞くとなんて酷い人なのだと思うだろう。でも、私の彼はとても優しい人だった。  江藤(えとう)(つばさ)。それが彼の名前だ。私、鳥越(とりごえ) ねねが彼と初めて話したのは、高校二年生の時。同じクラスで飼育委員になったことがきっかけだった。それまでは名前を知っている程度だった。 「鳥越さんって動物好き?」  放課後、ウサギ小屋の中を黙々と二人で掃除していたらそう聞かれた。正直何を話していいか分からず、気まずかったから少し助かった。 「まぁうち犬飼ってるから、好きかな。江藤くんは?」 「僕も好きだよ。動物全般。でも一番は猫かな?」  そう言うと鞄につけている猫のキーホルダーを見せる。男の子がつけるには可愛すぎるくらい可愛いキーホルダーだったけど不思議と彼には似合っていた。 「え、何それ凄い可愛い!」 「そうでしょ?」  彼はそう言うと歯を見せてニカッと笑った。今思えばその笑顔を見たあの瞬間から、私は彼のことが好きだったのだと思う。
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