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それからどれくらい時間が経っただろうか。インターホンの音で我に返る。家に訪ねてきたのは美南だった。
「美南……」
私の顔と部屋の状態を見てびっくりしているようだった。
「ねね、何やってるの?」
「全部見てたら翼くんのこと思い出しちゃうから。だから全部捨てるの」
「そんなことしても意味ないよ」
そう言う美南の声が微かに聞こえる。でもすぐに自分の泣き声にかき消され、聞こえなくなった。涙が込み上げてきて止まらない。
こんなことをしても意味が無いのは自分が一番分かっている。
私は子供のように声をあげて泣き続けた。そんな私を美南は優しく抱きしめてくれた。
「ごめんね……美南……」
「全然いいよ。私はこれくらいしか出来ないから。そうだ、気分転換に散歩でもしよっか」
そう言って美南は私を散歩に連れて行ってくれた。家の周りを歩き、近くの公園まできた。公園からは元気に遊ぶ子供達の声が聞こえる。
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