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ぼんやりとその様子を見ていると一匹の猫が私達の前に現れた。そして私の周りをぐるりと一周すると、足に擦り寄ってきた。
猫をよく見るとその瞳は青く輝いていた。
「この猫、目が青いしとても綺麗だよね」
美南の言うとおり、その猫はとても綺麗だった。
「もしかしてどこかの飼い猫かな。首輪はついてないけど」
美南がそう言いながら猫と目線を合わせようとする。すると猫はニャーと鳴き声を出してふらっとどこかへ行ってしまった。
「そういえば……いや、まぁいいや」
美南が何か言いかけてやめた。少し気になったけど私は聞かなかった。
「少しは落ち着いた? もう帰ろうか」
「うん……ありがとう」
美南のおかげで少し落ち着いた。どれだけ泣いても翼くんが帰ってくることはない。分かっていてもぽっかりと心に穴が空いてしまって今の私には塞ぎようがなかった。
家までの道を歩きながら、私はぼんやりとさっきの猫のことを思い浮かべていた。
「美南、ちょっと先帰ってくれる?」
「いいけど……いきなりどうしたの?」
「ちょっと行きたいところがあるから」
そんな私を美南は心配そうに見つめる。
「大丈夫、すぐ戻るから」
そう言い残して私は来た道を戻った。少ししてさっきの公園まで来る。
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