ヨハネの黙示録

1/1
14人が本棚に入れています
本棚に追加
/85ページ

ヨハネの黙示録

「あのなァ、朝っぱらから気色悪い笑い声を上げるなよ。ジジーがァ!」  すぐさまビーナスは心配げに辺りを見回した。  最近、近所から小学校がが寄せられ、この魔界野小学校の廃校の一因にもなっていた。  今は急ピッチで、東京湾の埋め立て地に新しい校舎が作られていた。 「ぬうゥ……、ジジーではない。吾輩はパパじゃァ」  魔王は隈取りのような派手な化粧を(ほどこ)し、黒いマントをまとっていた。見ているだけでも暑っ苦しい。 「知るか。なんだよ。『(ケモノ)の数字』って?」  ビーナスはワケがわからず、机を拳で叩き確かめるように(たず)ねた。 「カッカカッ、心ある者は『獣の数字』を(とな)えよ。『獣の数字』は人の数字にして、【666】なり」  魔王は(たの)しそうに笑みを浮かべ応えた。さすがに、そういうオカルトチックなことには詳しいようだ。 「えェ、なんだよ。そりゃァ?」  ビーナスは魔王の説明を聞いてもワケがわからない。何度も首を横に振ってみせた。 「カッカカッ、有名な『ヨハネの黙示録(もくじろく)』の一節なのじゃァ!」 「ううゥッ、『ヨハネの黙示録』……?」  ビーナスは聞き覚えがない。 「カッカカッ、一夜にして校庭に【666】と(かたど)られたのは、凶悪犯罪の予告なんじゃァ」  魔王はヤケに(うれ)しそうだ。
/85ページ

最初のコメントを投稿しよう!