また会いましょう

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 あの世界で3年は経っていたのに、ここの時間は数時間しか経っていなかった。   卒業式は二日後。  でも、「ダンスのリハーサルしてくる!」と朝出ていった(ムスメ)が帰宅した頃は臨月の妊婦になっている。  両親の驚愕ははんぱじゃないだろう。    しかしながら、そんな戸惑いが収まるのを待つことなく、その夜に私は産気づいた。  急遽お嫁に行った助産師の資格をもつ実姉が呼ばれ、全く状況も分からぬまま、私の赤ちゃんはこの世界に生まれ落ちた。  あっちの世界の王子にそっくりな金色の髪のグリーンの瞳をもつ超絶美形の男の子だった。    卒業式には「急病」と言って欠席をし、仲間には「感染の危険がある」とお見舞いを辞退して、後日卒業証書だけが送付されてきた。  まったく予期せずシングルマザーになった私。  両親も訳のわからないままお祖父ちゃん、おばあちゃんになったわけだが、生まれてきた赤ちゃんは可愛がらずにはいられないほど美しく可愛らしかった。  それでもシングルマザーとして生きるために大学は諦め、実家の近くにアパートを借りた。  両親の協力をしてもらい、愛しい我が子は一歳の誕生日を迎えることになった。  夫である王子にひと目でも会わせて上げたいと思わない日はなかった。  生まれてくる日を毎日待ち焦がれて、お腹に一日に何度も口づけてくれた年下の愛しい夫。  「マァマ」  賢い息子は誕生日のその日に私をママと呼んだ。六ヶ月目にはつかまり立ちをしていたし、一歳になった今は数歩なら歩けるようになっていた。顔立ちはますますあの美しい王子に似てきている。 ベビーカーで誕生ケーキやご馳走の材料のお買い物に行った帰り道で、私は3度目の時空の歪むあの感覚を覚えたのだ。
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