正しい童貞の殺し方

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側近に必要なものを準備させてから数日後、俺はジェフリー殿下の私室へと訪れた。 月が登り皆が寝静まった時間、俺は前世知識でこっそり作った部屋の鍵を使い扉を問題なく開けた。殿下の警護を任される騎士も扉の前に立っていたが、事前に飲ませた自家製ハーブティーがよく効いているのか、深い眠りについている。 音を立てないようそっと扉を開き、内側から鍵を閉め直す。 高級な絨毯のおかげで足音は目立たない。俺は薄い素材のローブを翻し、大きなベッドで眠るジェフリー殿下の側へ近づく。 月明かりに照らされる寝顔は、起きている時より幾分幼く見える。王族らしい金髪が月の光を反射しきらきらと輝いている。今は伏せられている瞳は、新芽を思い起こさせる緑色をしている事を知っている。 ジェフリー殿下はまさしく王子様像を具現化したような存在だ。 まあ、実際に王子様なんだが。 俺は持っていた紐で殿下の足を簡単に縛ると、そっと体重をかけないように殿下へ跨った。 「う・・・?」 「お目覚めですか、殿下」 髪の毛と同じ色のまつ毛がふるえ、そっと瞼が開かれる。何度か瞬きを繰り返すと、ようやく状況を理解したのかはっと息を呑んだ。 殿下は枕の下へ手を伸ばし探るような仕草をするが、お目当ての物が見つからないなかったからだろう。すぐに表情を焦らせた。 「お探しの物はこちらですね」 右手に持っている物をわざとらしく揺らすと、殿下がぎっと睨みつけてくる。 王家の紋章が掘られた短剣は、王子が産まれた時に作られる。身を守る武器であると同時に、王子の立場を証明する為のものでもある。 そんな大事な物を奪われて焦らないわけが無い。 「リオン、お前、一体どういうつもりだ!?」 「誤解なさらないでください。私に殿下を害する意思はありません。ただ少しお話をしにきただけです」 「はっ!話すだと?この状況で何を言うか、どうせコリンとの事だろう?」 この状況で強気な態度を崩さないのは、別に信頼しているからでも何でもない。単に殿下を傷付ける事ができないと思っているからなのだろう。 勿論立場的な理由もあるが、それだけじゃない。 以前のリオンの性格は温厚で大人しく、賊と争い側近が怪我を負った時、自分は無傷にも関わらず気絶するくらい血が苦手だった。そんなリオンがまして自分の手で殿下を傷つけるなんて出来るわけがない。 それに前世を思い出したとは言え、俺も平和な日本で育った人間だ。好んで人を傷つけたり、まして剣で刺すなんて余程必要に迫られなければ出来ないだろう。 「さすがジェフリー殿下は話が早くていらっしゃる」 「ふん、それがどうした。今まで何も言ってこなかっただろう。コリンとの事はお前も知っていて黙っていた、違うか?」 事実だ。 ただ箱入り坊ちゃんに想像力なんてある訳もない。また聞きしてそう言うこともあるだろうと納得していた程度だ。 当国比であんなにけしからん事をしてたなんて理解できていなかっただろう。 「ああ、そうか」 「はい?」 「それとも俺たちに混ざりたかったとか。数日前確か温室で卒倒するお前を見かけたな」 そんな訳ないと分かっていてそう言っているのだろう。 「ジェフリー殿下」 「ッ!」 俺はそっと短剣を鞘から引き抜くと鈍く輝く刃に月明かりを反射させる。 まさかと言う驚きの表情へ、僅かに恐怖が浮かぶ。 「な、何を、やめろ!」 俺はそっと雪の妖精のようだと褒められる顔に微笑みを浮かべると、己の首元へ短剣を近づけた。 目を見開く王子が静止するより早く短剣を滑らせた。 ただし、鋭利な刃が切ったのは俺の皮ではなく纏っていたローブの紐だ。 首元で留められているだけの簡素なローブだ。唯一の支えを失えば、重力に逆らう術など無い。 短剣が俺を傷つける事なく下げられたので安堵したのだろう。強張っていた身体を殿下は弛緩させるが、ローブに隠されていた俺の姿を見てぎょっと目を見開いた。 「おっ、おま!?なんだその破廉恥な衣は!?」 「童貞を殺す衣ですよ、ジェフリー殿下♡」 「は!?」 童貞を殺すセーター。 一世を風靡したその衣は、セーターと言う名の通り毛糸で編まれている。しかし袖はなく、腕は剥き出し。丈も短く膝上どころの長さでは無い。ギリギリ股間が隠れる長さである。 そして最大の特徴は背中が臀部付近まで大きく空いている点にある。 隠すべき部位をギリギリ隠し、しかし大胆に肌を見せる。大変フェティシズムを擽る衣である。 「リ、リ、リオン、おま、なん、な、っ!?」 「殿下に喜んでいただけたようで何よりです。だけど殿下、まだ夜は始まったばかりです。これからの時間をたっぷりと、私と堪能しましょう」 俺は短剣を鞘に戻すと、ベッドの下へと軽く投げ捨てる。ジェフリー殿下は大切な短剣の行方を気にする余裕すらないらしい。 その視線は俺に釘付けだ。 跨いでいる殿下の腰元の反応も、童貞らしく素直で大変よろしい。 淫靡に見えるようわざとらしく腰を動かせば、その僅かな刺激に殿下は小さく息を詰める。 かわいらしいその反応にくすりと笑みをこぼすと、殿下の履き物へ手を伸ばした。
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