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レンダルたち三人の前にネコ型の魔物が三体いた。と言っても、人間の三倍ほどの大きさで、全身を覆う針のような毛は黄色と黒の縞模様だ。口は大きく裂け、尖った歯が剣山のように幾重にも並んでいる。
「これは厄介な奴が現れた。ゴロとトーミスなら心配はいらないだろうが」
「バカ言え、これはチャンスだ」
「チャンス?」
「早くお前の得意技を出せ」
フィルに言われて、アンドロはやっと気が付いたように背負っていた袋から二股になった道具を取り出した。
Yの字になった堅い木に、金属を打ち付けて補強をしてある。枝分かれした上部の二カ所に強力なゴムを付けてある。金属の玉や石をゴムに乗せ、引っ張って遠くに飛ばす道具だ。
旅をする者たちは、遠くにいる魔物や空を飛ぶ魔物と戦うために、飛び道具が必要になる。大抵の者は弓を使う。魔法を使える者がいれば魔法を使う。しかしアンドロのように特殊な武器を使う者も少なからずいた。
アンドロは幼い頃からその道具を使う練習をしてきた。二股の道具は木の枝から簡単に作れたし、鉄の玉を飛ばして的に当てる練習もどこででもできた。ずっとその腕を磨いてきたおかげで、今では遠く、正確に鉄の玉を飛ばすことができる。弓矢ほどの距離も正確性もなかったが、それでも魔物との戦いでは十分に威力を発揮できる武器だった。
ゴロは槍を構え、トーミスは剣を抜いて獣と対峙していた。レンダルはといえば、二人の後ろの少し離れたところで小さくなって震えている。
アンドロは鉄の玉をのせたゴムをきりきりと引っ張った。
「おい、狙うのは魔物じゃないんだぞ。わかってるな?」
フィルが言った。
「は?」
「ばか。ゴロかトーミスを狙うんだ」
「しかし、そんなことをしたら」
「ゴロとトーミスだぞ? あの程度の魔物と戦って死ぬことはない。早くやれ」
「わかった」
アンドロは物陰を伝うように素早く移動し、さらにレンダルたちに近付いた。
狙いを外さない距離まで近づいたアンドロは、もう一度得意の道具を構えた。
魔物の一体は前足から血を流している。一度襲いかかってみたが、ゴロとトーミスがかなり腕の立つ人間と知り、警戒をして睨みあいを続けていた。
アンドロの放った鉄球がゴロの足を打った。丁度、膝の裏側だった。
ゴロは弾かれたようにその場に倒れそうになった。咄嗟に槍を突いて体勢を立て直す。
二人は新手の魔物が現れたのかと一瞬、辺りを警戒した。
その隙を逃さず、魔物たちが襲いかかった。
足の痛みに動きの遅れたゴロは魔物の一撃をかわしきれずに、鋭い爪で腕を引き裂かれた。槍が音を立てて地面に転がる。
ゴロはさらなる攻撃を避けて地面を転がり、傷を負っていない手で剣を抜いた。
その時、戦いの後ろで小さくなって震えていたレンダルが立ち上がると、急に走り出した。逃げたのだ。
「おい、待て!」
そう叫んだゴロに再び魔物が襲いかかった。
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